浮気

カバンを投げつけ壁を殴りながら『さっさと出ていけ!』と言う夫の言う通りにした結果…【8話】

 

ユイトが、

びっくり仰天するほど、

愛想よく、

おしゃべりをしているのだ!

女性に、とっても近い。

受付のブースに

上半身が

入り込んでいるようにも

見えるほど。

何をやってんだ!

危うく声が出そうに

なったけど、

懸命に堪えて、

物陰に隠れる。

なんだか、みじめだ。

落ち込む気持ちを我慢して、

耳を傾ける。

夫と受付の女性は、

誰も居ないと

思っているのか、

油断しているのか。

べったべたの

甘々トークを囁いている。

エントランスは

ホール状なので、

音はよく響く。

いくら声のトーンを

落としていても

 

ユイト

「はーちゃん、

可愛い」

 

「ここで

抱きしめちゃってもいい?」
 

「ねえ…

そろそろキスさせてよ」

 

こんなのが、ぽろぽろ

聞こえてくるのだ。

気持ち悪い…

なんなのこいつ…

ここは商業ビルで、

オフィスが入居している。

総合玄関は、

れっきとした公共の場所だ。

何なのこれ?

公開浮気ショー?