モラハラ

産後の私に心無い言葉で追込む夫【10話】

 

ウエスギ

「失礼します、奥さん」

 

という声がした。

 

同時に、大きくて暖かい手が

私の肩に触れ、その場から

一歩後ろに下がらせてくれた。

 

「あ、ウエスギ!」

 

夫がその男性の名前を

嬉しそうに呼ぶ。

ウエスギさん、とは

夫の同期の中で出世頭と

言われている男性だ。

 

甘いマスクと落ち着いた

テノールの美声で、女性人気も

すごいのだとか。

 

かつて夫が、

 

「どう頑張ったって、

ウエスギには

敵わないんだよなぁ」

 

と羨望と嫉妬が混ざったような

ことを言っていた覚えがある。

 

「ウエスギからも、

うちの嫁に言ってやってよ!

デブじゃ話にならん、てww」

 

と夫が話しかけると、

ウエスギさんは

低い声で反論した。

 

ウエスギ

「…お前さ、自分の

子どもを毎日必死で

育ててくれる女性に対して、

よくも、平気で

そんな口が利けたもんだな」

 

私を庇う発言に、

夫に便乗していた人たちが

少しだけ

バツの悪そうな表情をした。

 

「おいおいw

こんなのは酒の場の

冗談じゃんか?ww

本気にスンナって」

 

ウエスギ

「冗談って…

お前、本気か?お前たちが

暴言を吐いている間、奥さんは

ずっと辛そうな顔してたけど?

 

気付いてた?」