私
「お義父様、
申し訳ありません。
こんな形で来ることになって」
私は深々と頭を下げた。
義父は静かに目を閉じ、
深呼吸をした後、
ゆっくりと目を開けた。
義父
「キヌ子さん…
顔を上げなさい。
謝るべきはあなたではない」
その言葉に、私は顔を上げた。
義父の目には悲しみと
怒りが宿っていた。
義父の厳かで威厳ある声が
本堂に響いた。
義父
「お前たちは今日から
邪念を捨てて
仏の道を学ぶのです」
その言葉に、簀巻きにされた
夫とミキの体が
また小さく震えた。
義父は続けて説明を始めた。
義父
「我が寺院では
3泊4日コースの
体験修行を行っている。
座禅、滝行、勤行、写経。
これらを通じて心を清め、
己の過ちを
振り返ることになる」
修行コースは、世俗の煩悩から
離れ、自己と向き合うための
厳しいプログラムだ。
スマートフォンなどの
通信機器は一切禁止。
それらは全て、お大黒である
義母に
預けることになっている。
義父
「世俗との繋がりを断ち、
ただ己の心と向き合うのだ」
義父の言葉が終わると、
義母が静かに現れた。
彼女は本堂の隅に置かれた夫と
ミキの衣服に近づき、
そのポケットから
スマートフォンを取り出した。
義母
「世俗の誘惑から
離れるのです」
その言葉とともに、
義母はスマートフォンを
木箱に収めた。
夫
「ちょ、ちょっと
待ってよ!待ってってば!」
ミキ
「お願い、
せめて家族に連絡だけでも…」