ヒトシの話を聞き終えた私は、
複雑な思いに駆られた。
怒りと悲しみ。
そして少しばかりの
安堵が入り混じる。
これから、どう向き合って
いけばいいのか…
答えはそう簡単には出そうにないな。
ヒトシの顔には疲労の色が
濃く刻まれていた。
彼は深く溜息をつきながら、
言葉を紡いだ。
ヒトシ
「キヌ子に黙ってて
ごめん。言い訳に聞こえるかも
しれないけど、イサムも
キヌ子も大事な友達で、
俺もどうするのがベストなのか
よくわからなくなってたんだ」
その言葉に、ヒトシも
十分に悩み、揺れ動いていた
ことが明らかだった。
責められるべきは
夫とミキであって、
ヒトシではない。
そう思いながら、私は
伝えるべきことを口にした。
私
「あの2人、
まだ関係を続いてるよ。
この週末、ヒトシが
仕事なのをいいことに、また
会う気でいるみたいだから」
私は例の
マッチングアプリの話をした。
画面も私のスマートフォンで
撮影してある証拠を見せながら
説明を加えた。
ヒトシは愕然とした表情を
浮かべ、深い溜息をついた。
ヒトシ
「俺さ、
もう我慢する必要ないよな?」
私は無言で頷いた。
その瞬間、私とヒトシは言葉を
交わさずとも
互いの考えを理解した。