夫とミキの不倫を
なぜ黙認しているのか、
それとも泳がせているのか。
どちらにせよ、私に
黙し続けていることに対して
一言言いたかった。
勇気を振り絞り、
私はヒトシに
連絡を取ることにした。
スマートフォンを手に取り、
ヒトシの名前を探す。
連絡を入れ、互いの仕事の
合間を縫って会う
約束を取り付けた。
待ち合わせのカフェで
席に着くなり、
私は切り出した。
私
「私、全部知ってるわ」
その一言で、
ヒトシの表情が曇った。
彼は俯き、小さな声で呟いた。
ヒトシ
「…っごめん」
その後、堰を切ったように彼は
話し始めた。
ミキの些細な違和感から、
イサムとの不倫を突き止める
までの経緯を語った。
監視アプリをミキの
スマートフォンに密かに
インストールし、
イサムとのやり取りを
全て把握していたという。
あの衝撃の出来事があった日、
イサムは
ミキにこう持ちかけたそうだ。
夫
「なあ、キヌ子の兄貴が
倒れたらしいんだ。
キヌ子は病院に行ったり
兄貴の面倒を見たりで、
しばらく帰ってこないから、
うちで羽を伸ばそうぜww」
一方、ミキも
ヒトシに嘘をついていた。
ミキ「施設にいる
おじいちゃんが私に
会いたがってるって
連絡があったの。
もしかしたら
泊まりになるかもしれない」
そう言って、一泊分の荷物を
まとめて家を出たとの事。