夫
「そ、そうか…大丈夫か?
薬持ってこようか?」
私
「いい。休めば治る」
夫を押しのけるようにして、
寝室に向かう。
ベッドに横たわり目を閉じる。
どうすればいいの…このまま
知らんぷりを続けるの?
それとも…
答えは出ない。
ただ、これからの日々が、
想像以上に辛いものに
なるだろうことだけは
確かだった。
枕に顔を埋めると、
静かに涙が溢れ出した。
あの日以来、夫との生活は
氷のように冷たいものに
なっていた。
朝の挨拶も、夕食の会話も、
すべてが表面的なものに
変わってしまった。
特に夜の営みについては、
様々な言い訳を重ねて
避け続けていた。
私
「今日は頭が痛くて…」
夫
「そうか。
ゆっくり休んでくれ」
私
「仕事で疲れてて…」
夫
「分かった。
無理しないでね」
毎回、夫は理解ある表情を
見せるが、その度に胸が
締め付けられる。
いつまでこんな言い訳が
通用するだろうか。
そんな不安が
頭をよぎる夜もあった。
ある夜、リビングでテレビを
見ていると、夫が映画を
観ながら寝落ちしてしまった。
テーブルの上に、
夫のスマホが
無防備に置かれている。