浮気

帰宅すると夫と夫の親友の奥さんが…とある場所へ連行した結果【4話】

 

翌朝、兄の家を

出ようとした時、

玄関のチャイムが鳴った。

 

ドアを開けると、そこには

イサムが立っていた。

 

彼の手には

大きなキャリーケースが。

 

「おはよう。

義兄さんの具合はどう?」

 

「あ、おはよう…

少しずつ良くなってるよ」

 

言葉を交わしながら、私は

平静を装うのに必死だった。

 

夫は何食わぬ顔で、

キャリーケースを差し出した。

 

「着替えを持ってきたよ。

一応、見繕ってみたんだけど」

 

ケースを開けると、そこには

完璧なまでに準備された衣類や

日用品が。

 

パジャマ用のTシャツと

ジャージ、普段着、仕事用の

ビジネスカジュアル。

下着類に基礎化粧品まで、

すべて過不足なく揃っていた。

 

なんて…抜け目がないんだろう

 

悔しさと複雑な思いが

込み上げてくる。

それでも、表情を崩さないよう

気をつけながら言った。

 

「イサム、ありがとう。

本当に助かるわ」

 

「良かった。あ、そうだ」

 

夫は紙袋を取り出すと、

兄の元へ向かった。

 

「お義兄さん、お怪我の

具合はいかがですか?

これ、以前好きだと

おっしゃっていた羊羹です。

お見舞いにどうぞ」

 

「気を遣ってくれて

ありがとう」

 

兄は嬉しそうに

羊羹を受け取った。

夫の気配りに、私の胸は

更に締め付けられる。

 

「お大事にしてください。

それじゃ、仕事に行かなきゃ。

キヌ子、また連絡するね」

 

夫は去り際まで完璧な

振る舞いを見せた。

 

ドアが閉まると、

兄が感心したように言った。

 

「いやぁ、イサム君って

本当に気が利くなぁ。キヌ子、

良い旦那さんを見つけたよ。

俺もできるだけ早く

左手の生活に慣れるから。

本当に悪いな」