浮気

私の夫に手を出すな【22】

 

ケンジの苦悩を見ながら、

何も知らないかのように振る舞う。

 

この静かなリビングに漂う

緊張感の中で、

私は密かな満足感を覚えていた。

 

数日前、ミカが遠くの街へ移ること

を決意したという情報を得た。

これで、私とケンジの間に

入る者はいなくなる。

 

そして今、その結果が

ケンジの姿に如実に表れている。

 

夫の苦悩を目の当たりにしながら、

私は静かに

この勝利を味わった。

 

その日、ケンジは普段より

早く帰宅した。

玄関に入る夫の足取りは重く、

顔には見慣れない

疲れの色が浮かんでいた。

 

「おかえりなさい。

あれ?今日は早いんだね」

 

「ああ…うん」

 

夫の声には、何か言いよどむような

様子が感じられた。

 

リビングに入ったケンジは、

しばらく黙ったまま落ち着かない

様子でソファに座った。

 

「何かあった?」

 

ケンジは深呼吸をして、

ゆっくりと口を開いた。

 

「トウ子…実は、話があるんだ」

 

私は夫の様子を注意深く見ながら、

落ち着いた声で答えた。

 

「どうしたの?

珍しく真剣な顔だね?」

 

ケンジは言葉を選びながら、

ゆっくりと話し始めた。

 

「俺…過ちを犯したんだ。

…ミカという女性と…」

 

夫の告白を聞きながら、

私は複雑な思いに包まれた。

 

予想していた展開ではあったが、

実際に聞くと

胸が締め付けられる思いがした。