最初の手紙は
こういう内容にした。
「ミカさん、こんにちは。
あなたのことを
よく知っている者です。
今日あなたは
8時15分に家を出ましたね。
玄関先でコーヒーを
一口飲んでから出発する
習慣があるんですね
ピンクのブラウス、
素敵でしたよ。18時に帰宅。
その後、22時にコンビニに
行きましたね。
チョコレートアイスを
買ったのを見ました。
甘いものが好きなんですね」
この手紙で、ミカの心に
小さな不安の種を蒔くことができるはず。
これを皮切りに、私は毎日のように
ミカの行動を観察し、異なる内容の
手紙を送り続けた。
時には彼女の服装について、
またある時は彼女の行動パターンに
ついて。そのたびに、私は新たな
詳細を盛り込み、
ミカの恐怖を徐々に深めていった。
ある日、私はさらに踏み込んだ
内容の手紙を送った。
「昨日、ケンジさんとカフェで
密会していましたね。
あなたは
ストロベリーショートケーキ、
ケンジさんは
チーズケーキでしたよね。
楽しそうに笑っていましたが、
本当に幸せそうでしたか?
それとも
罪の意識を感じていましたか?」
私は、ミカの行動を
徹底的に監視し、
それを手紙に記していった。
日を追うごとに、
彼女の恐怖が増していくのが
見て取れた。
外出時の様子が変わり、常に周囲を
警戒するようになった。
そんなミカの様子をさらに詳しく
知るため、私は彼女の行動範囲を
徹底的に調べ上げた。
そして、ついにチャンスが訪れた。
ある日、私はミカとケンジの会話を
盗み聞きすることに成功したのだ。
人気のない公園の片隅、
古びたベンチに座る
2人の姿が見えた。
私は近くの木陰に身を潜め、
息を殺して耳を澄ませた。