浮気

私の夫に手を出すな【16】

 

カレーだけでは物足りない。

もっと強烈な方法で、

ケンジを縛り付けなければ。

 

しばらく考えた後、

新たな計画が浮かんだ。

スマートフォンを手に取り、

意図的に不穏な検索履歴を

残すことにした。

 

その日、私はわざと

スマートフォンで「夫 永眠」

「夫 事故」「夫 失踪」

いった言葉を検索し、

履歴を残した。

 

夕方、ケンジが帰宅する直前に、

私は再びそれらの言葉を検索し、

履歴を残したままにしておいた。

 

心臓が高鳴る。

この計画がうまくいけば、

ケンジの心にさらなる

不安の種を蒔けるはず。

 

ケンジが玄関に入る音が

聞こえると、さりげなく

スマートフォンをテーブルの上に

置き、台所へ向かった。

 

「お帰りなさい。

今日もカレーだよ。

もう少し待っててね」

 

声が上ずらないよう、

必死に落ち着きを装う。

 

リビングに入ったケンジの気配を

感じながら、

私は息を潜めて様子を窺った。

 

 

「トウ子、スマホに

通知来てるみたいだよ?」

 

計画通り。胸の鼓動が早くなる。

 

「そう?ちょっと見てくれる?

私、今手が離せなくて」

 

ケンジがスマートフォンを

手に取る音が聞こえる。

 

「な…なんだよ。これ…」

 

ケンジの声に混じる動揺を聞いて、

私の中で小さな

勝利感が湧き上がる。

 

ゆっくりとリビングに戻り、

できる限り無邪気な表情を装った。

 

「どうしたの?誰からだった?」

 

ケンジの顔が見る見る

青ざめていく様子を、

私は内心で冷ややかに見つめた。

 

恐怖と困惑が入り混じった

その表情こそ、

私が求めていたものだった。

 

これで、あなたは

さらに私のものになったね。