その瞬間、車内のバックミラーに
映る自分の顔に目が留まる。
そこにあるのは
見知らぬ女の顔だった。
冷たく輝く目、引き締まった口元。
これが、愛に狂った
私の本当の姿なのだろうか。
ケンジへの想いが再燃する。
それは純粋な愛ではなく、
執着と支配欲に満ちた
歪んだ感情だ。
街灯が車内に差し込み、
私の決意はさらに固まる。
あなたは私のもの。
永遠に、私だけのもの。
誰にも渡さない。
低くつぶやいた言葉が、
静寂な車内に響く。
狂気の微笑みが私の唇に浮かぶ。
夜の闇に紛れ、私は静かに
車を発進させた。
胸の内に秘めた決意は、
鋼のように冷たく、
そして固かった。
ミカの生活を
徹底的に調査する中で、
私は彼女の好物が
カレーだと知った。
ある金曜日の夜、ケンジと一緒に
行ったレストランで、彼女が
嬉しそうにスパイシーなカレーを
堪能する姿を目撃したのだ。
その瞬間、私の心に
邪悪なアイデアが浮かんだ。
翌日の朝、私は
早起きして台所に立った。
スパイスの香りが部屋中に漂う中、
ケンジが目を覚ました。
これには二つの目的があった。
一つは、ケンジに
ミカを思い出させ、
罪悪感を植え付けること。
もう一つは、ケンジの心理的な
抵抗力を少しずつ削いでいくこと。
夫
「ん…おはよう。
何か香ばしい匂いがするね」
私
「カレーだよ。今日から
しばらく、私のカレーを
楽しんでもらおうと思って」