いつもは「トウ子」と
呼び捨てだが、一応外聞を気にして
ここでは「さん」を付けたようだ。
こういう細やかな心遣いが
できるのが、マサトの良い所だ。
夫
「お…男!?お前、何者だ!」
夫が警戒しまくりの態度を取る。
夫とマサトは面識が
ないから仕方ない。
産後の女性を見舞う男性など、
基本的に親しい間柄だから夫の
気持ちも、理解できなくもない。
マサト
「あ、トウ子さんの
旦那様ですね。はじめまして。
私、こういうものです」
と言って、マサトは名刺を
差し出した。
夫
「べ、べべべ!弁護士!?」
夫は名刺の肩書をして、
今までにないほど狼狽えた。
そして、マサトのスーツの
襟元に目をやる。
金色の向日葵モチーフの
バッジを視認して、さらに
挙動不審になった。
マサトはそんな夫の様子を
意に介さず、話を続ける。
マサト
「トウ子さんから、
常々お話を伺っております。
今後は私を通して
連絡をしてください」
静かで強い声に気圧され、
縋るような目で夫は私を見た。