モラハラ

いきなり態度が急変した夫。その理由とは…【12】

 

いつもは「トウ子」と

呼び捨てだが、一応外聞を気にして

ここでは「さん」を付けたようだ。

 

こういう細やかな心遣いが

できるのが、マサトの良い所だ。

 

「お…男!?お前、何者だ!」

 

夫が警戒しまくりの態度を取る。

 

夫とマサトは面識が

ないから仕方ない。

 

産後の女性を見舞う男性など、

基本的に親しい間柄だから夫の

気持ちも、理解できなくもない。

 

マサト

「あ、トウ子さんの

旦那様ですね。はじめまして。

 

私、こういうものです」

 

と言って、マサトは名刺を

差し出した。

 

「べ、べべべ!弁護士!?」

 

夫は名刺の肩書をして、

今までにないほど狼狽えた。

そして、マサトのスーツの

襟元に目をやる。

 

金色の向日葵モチーフの

バッジを視認して、さらに

挙動不審になった。

 

マサトはそんな夫の様子を

意に介さず、話を続ける。

 

マサト

「トウ子さんから、

常々お話を伺っております。

 

今後は私を通して

連絡をしてください」

 

静かで強い声に気圧され、

縋るような目で夫は私を見た。