私は振り向いて相手を確認した。
最初は誰かわからなかったが、
どこかに幼い頃の面影があった。
私
「マサト…?」
マサトは私の幼馴染だったが、
中学2年生に上がる時に
転校してしまった。
まじめで成績優秀で、
正義感も強く、男女関係なく
弱いものいじめから
同級生を庇っていた。
マサト
「うん、そう。俺だよ!
久しぶりだな!」
マサトは屈託なさそうに笑った。
ああ、笑った顔は
子供の頃と同じなんだ。
マサト
「子供できたんだな」
私
「そうなの。双子だって」
マサト
「わあ!それは大変だ」
私達は思い出話と近況報告で
盛り上がった。
マサトは家庭の事情で引越した後、
自営業の仕事をするために
懐かしい故郷に帰って来たらしい。
話の途中、
マサトはふと真顔になった。
マサト
「トウ子さ、
何か思い詰めてない?
初めての赤ちゃんで気が
張っているのかもしれないけど、
周りに助けを求めていいんだよ?」
一瞬の間をおいて、私の目からは
大粒の涙が零れ落ちた。
どんどん、
どんどん、
もう止まらない。
号泣だった。
私は夫とのことを
マサトに洗いざらい喋った。
途中でつっかえたり、話が
前後したりでグチャグチャに
なったりしたけど、マサトは
黙って私の話を聞いてくれた。
それだけでも
私の心はとてもスッキリした。