私
「ああ、そうね。
寝室に戻らないと」
シズク
「ほら、つかまって」
中学生になって
大人の女性に限りなく近い
体格にまで成長した娘。
娘は私をベッドに寝かせると、
サイドチェストに
水を持ってきてくれた。
シズク
「酔い冷ましのお水、
置いておくね。
零さないように気を付けて。
お休み、お母さん」
私
「シズクありがとう。
お休み」
そこで再び
私の記憶は途切れた。
ハッと気が付くと、
太陽がいつもより高い。
そこに廊下をゆっくりと
忍び足で歩く音と、
玄関の扉を慎重に開ける音、
パタンとしまって
鍵がかかる音がした。
私はバッとベッドから
駆け下りると、夫だけではなく
娘の姿も
見えないことに気づいた。
さっきの物音は
娘のものに違いない。
私は咄嗟に玄関を飛び出して
娘の後を追いかけた。
既に姿は見えなかったけれど、
娘が身に付けている
スマートウォッチと
私のスマホを
連動させていたため、
位置の把握はできた。
大通りをかなりのスピードで
進んでいるようだ。
恐らく車だろう。
私は流しのタクシーを
捕まえて、
娘の後を追ってもらった。