浮気

夫が片付けをしている納屋に近づくと…【6】

 

ここで犬のように

ひっついて離れないとなれば

ある意味面白かったのだが、

残念ながら人間と犬とでは

体の構造が違う。

 

「ひぃぃぃぃ」

 

ショウママ

「ぎゃあああああ」

 

2人はすぐに離れ、掘立小屋の外に

飛び出していった。

 

「あ、コラ!待たんかい!」

 

私も熊手を構えたまま、

夫と浮気相手の後ろを追いかける。

 

その時に気づいたのだが、

夫と浮気相手は2人とも

下半身だけではなく、

足にも何も身に付けていなかった。

 

つまり、素足だ。

 

田畑の中の農道で、ある程度は

轍ができているとはいえ、

砂利や小石も普通に混じっている。

普通ならば到底痛くて走ることなど

できそうにもないが、

2人はよほど必死なのか、

靴を履いている私が距離を

縮められないほどの

スピードで逃げていく。

 

逃がしてたまるものか!

 

「コラー!待てぇえい!

この泥棒猫がああああ!」

 

私は何度もそう叫びながら、

必死に2人の後を追いかけた。

 

すると、その叫び声を聞きつけた

農作業中の人々がざわつきだす。