ここで犬のように
ひっついて離れないとなれば
ある意味面白かったのだが、
残念ながら人間と犬とでは
体の構造が違う。
夫
「ひぃぃぃぃ」
ショウママ
「ぎゃあああああ」
2人はすぐに離れ、掘立小屋の外に
飛び出していった。
私
「あ、コラ!待たんかい!」
私も熊手を構えたまま、
夫と浮気相手の後ろを追いかける。
その時に気づいたのだが、
夫と浮気相手は2人とも
下半身だけではなく、
足にも何も身に付けていなかった。
つまり、素足だ。
田畑の中の農道で、ある程度は
轍ができているとはいえ、
砂利や小石も普通に混じっている。
普通ならば到底痛くて走ることなど
できそうにもないが、
2人はよほど必死なのか、
靴を履いている私が距離を
縮められないほどの
スピードで逃げていく。
逃がしてたまるものか!
私
「コラー!待てぇえい!
この泥棒猫がああああ!」
私は何度もそう叫びながら、
必死に2人の後を追いかけた。
すると、その叫び声を聞きつけた
農作業中の人々がざわつきだす。