浮気

夫が片付けをしている納屋に近づくと…【2】

 

とはいえ、

住めば都とはよく言ったもの。

1年も過ぎれば私は田舎の環境に

適応していた。

 

お日様を浴びて土まみれになって

働くのも、寧ろ楽しいくらいだ。

 

何より、取れたて新鮮な野菜を

すぐに食べられるのは大きい。

 

ご近所同士で自分の家では

作付けしていない農産物の交換も

楽しかった。

 

何より義両親がネットで言う所の

「膿家脳」ではなかった

というのが、私が田舎生活を

心から楽しめた理由だろう。

 

結婚して1年が過ぎた頃に

私が妊娠し、生まれたのが

元気いっぱいな男の子だった

というのも大きかったのかな?

 

この時ばかりは義両親も、

 

義母

「男の子よ、男の子!

トウ子さん、よく頑張ったわね!」

 

義父

「跡取りだ、跡取り!

トウ子さん、でかした!」

 

と舞い上がっていたからね。

 

子どもが少し大きくなると、

友達と一緒に野山を

駆け巡って遊ぶように。

 

真っ黒に日焼けして思いっきり

遊ぶ幼少期は、都会っ子では

なかなか得られない

貴重な経験だと思う。

 

こうして私は凡そ10年余りを

農家の長男嫁として過ごしてきた。

 

そして今後もそのように暮らし、

年を取り、やがて息子に看取られ

婚家の墓の下に入るのだろうと。

 

そんな未来予想図を

ぶち壊す出来事が起こったのだ。