浮気

夫が片付けをしている納屋に近づくと…【1】

 

私はトウ子。

学生時代は全く農業と関係ない

勉強をしていたが、気づいたら

農家の嫁になっていた。

 

というのは半分冗談だ。

 

同い年の夫とはインカレサークルを

通じて出会い、交際をスタート。

 

私は所謂大都会ではないものの、

地方中核都市の出身。

夫は過疎化が進む農村の出身。

 

私が子供の頃、田舎の祖父母の家に

遊びに行った時のノスタルジックの

情景が、夫の実家では当たり前。

 

キリリと冷たい湧き水に、

澄んだ空気。

シンシンと積もる雪に、

可愛らしい小動物。

 

「こんな田舎の話なんか

聞いても、

面白くも何ともないだろ?」

 

と夫は話していたけれど、

私にとっては思い出と重なる分、

非常に興味深かった。

 

夫は農家の跡取りのため、

農学部を卒業。

 

私は結婚して

夫の家に入る形になった。

 

今どき農家に嫁入り!?

と学生時代の友人たちには

そりゃもう、驚かれた。

 

コンビニ、ない。

 

テーマパークどころか

映画館もない。

 

鉄道も通っていない。

 

田舎の農家で義両親とは

敷地内別居。

 

義弟夫婦も近隣住まい。

ご近所周りだって顔と名前が

一致しない人なんて

1人もいない環境。

 

私が知らない人も私のことを

知っているし、

いつ、どこに買い物に出かけたとか

買い物の内容とか、

びっくりするほど

正確に把握していたり。

かと思えば、とんでもない誤解が

まことしやかに噂として

広がっていたりと、

まあクセがあるっちゃある。