午後になると、手をつないで
散歩する二人の姿が見えた。
車を少し動かしながら、
バレないように
気をつけて撮影した。
夕方、チェックアウトの時間。
旅館の出口の近くで待機して、
二人が一緒に出てくる瞬間を
最後にカメラに収めた。
これで十分な証拠が
集まったと確信して、
帰ることにした。
車の中で撮った写真を
確認しながら、
次にどうするか考え始めた。
悲しいけど、
もう後には引けない。
これからが本当の
戦いの始まりなんだ。
その日から、私の
二重生活が始まった。
朝はいつも通り
笑顔で送り出し、夜はおいしい
夕食を用意して待っている。
でも、ジュンヤが
寝静まった後、こっそりと
パソコンを開いて
情報収集を始める。
探偵事務所のサイトを見たり、
離婚に関する法律を調べたり…
でも、ただ情報を集めるだけ
じゃダメだと気づいた。
このままじゃ、
私の方が参ってしまう。
だから、
自分を変えることにした。
まずは外見から。
新しい服を買ったり、
髪型を変えたり。
今まで興味がなかった美容にも
気を使うようになった。
毎日少しずつ、
自分磨きを始めたんだ。
同時に、内面も磨いていった。
本を読んだり、
オンライン講座を受けたり。
自分の価値を高めることで、
自信をつけていった。
この変化は、私自身を強くする
手段でもあった。
自分を大切にすることで、
ジュンヤの裏切りから
受けた傷を
少しずつ癒していったんだ。
そんな努力を重ねて
数週間が経った頃…。
ジュンヤ
「キヌ子、最近
綺麗になった？
なんか輝いて見えるよ」
私
「え？そう？ありがとう。
ジュンヤに
喜んでもらえるように
頑張ってるからかな」
私
「え？そう？ありがとう。
ジュンヤに喜んで
もらえるように
頑張ってるからかな」
ジュンヤ
「そうか…俺、
幸せ者だな」
私
「うん、私も幸せよ」
…そう、演技は完璧。
