タツヤ
「そんなことしないよ!
このオジさんのせいでお母さん、
よく泣いてたじゃん。
…俺、覚えてるよ」
カズヤ
「そうそう。
あんな母さんの様子をみたら、
どれだけひどい事なのか、
子供だって理解するよ。
浮気する最低な人になんて俺たち、
絶対にならないよ!」
と、小さい頃の
思い出を話し出した。
私、あまり
いい母親じゃなかったな…
とちょっとしんみりしていた。
招待客の中には息子たちの言葉で
こっそりと目元を拭う人もいた。
そんな空気をぶち壊したのは、
またしてもマサアキだった。
マサアキ
「え…!!
トウ子、お前…よく泣いてたって、
俺にそんなに未練があったのか!
よし、それなら、
そいつから俺に乗り換えろよ。
俺、今独身だしさ!
めちゃくちゃいい考えだろw」
という何とも
頓珍漢なことを言い出したのだ。
凍り付く会場の空気。
軽蔑の眼差しをマサアキに
向けるリュウヘイと息子たち。
リュウヘイがマサアキに
食ってかかろうとするところを
私は押さえた。
私
「私、もう1度あなたに会ったら、
どれだけ腸が煮えかえるか
わからないなって思っていたの。
でも違ったわ」
マサアキ
「へ?」
私
「何も感じないのよ。
で、さっきストーンと理解したの。
私にとって、あなたって
何の価値も意味もないってことに。
ああ!でもね、
息子たちを授けてくれたことだけは
感謝してるよ。でも、それだけ」