医者
「お母さ~ん。
もうちょっと頑張りますよ~。
帝王切開するからね~。
頑張ってくださいね~」
産みの苦しみを味わう中、
お医者さんのそんな声が
掛かったような、
掛かっていないような…。
ただ、自分が「帝王切開」という
言葉に怯えたのだけは
はっきりと覚えている。
なぜか切腹のイメージが
浮かんでしまった。
それも新選組がやる、
十文字式のエグイやつ。
私
「え!?切腹!?
いや、コワイ」
って騒いでいるうちに
麻酔を打たれて、
私は意識を手放した。
意識が戻ってきた頃には
すでに病室だった。
起き上がる元気はまだなくて、
薄目を開けられるかな~
ってくらい。
そうしたら、病室に
人の気配がするの。
あ、マサアキだ。
そう思ったんだけど、
彼1人じゃなかった。
義母かなとも思ったけど、
声が義母にしては若すぎたんだ。
女
「ようやく決めてくれたんだ…」
っていう、涙声の女の声。
マサアキ
「ああ。俺は
コイツと別れる。
それでお前と一緒になるよ」
信じられないことに、
出産した妻が寝ている病室に、
マサアキは
浮気相手を連れ込んでいた。