モラハラ

高熱の私に酒をぶっかけてきた 【11話】

 

「女としての魅力がない?

じゃあ、魅力を出すための

時間を捻出するために
 
アンタは何かした?
 
家事育児、全部丸投げだったよね!

 

私と息子が高熱を出しても
 
浮気相手との旅行を優先するし!

 
熱が出てる私に【消毒】とか言って、

お酒を頭から浴びせかけるし!」

 

「いちいちガタガタうるせぇんだよ!
 
嫁のクセに本当に生意気で腹が立つ!」

 

私も夫も言いたい放題だった。

実はこれが狙いだったりもする。

 

「そう。あなたも私も
 
言いたいことをある程度、

言えたようね」

 

私は頃合いを見て、

わざと芝居がかった様子で

ジャケットの内ポケットに手を入れた。

 

この動作が何を意味するのか、

夫は気づいたようだった。

 

「な、なあ。もしかして、今の会話…」

 

「そうよ。録音させてもらったわ。
 
あなたの本心と本性を

確認するためにね」

 

夫は悔しそうに唇を噛んで

私を睨みつけてきた。

しばし沈黙が下りる応接室。

そこへ上司が厳しい顔をして入って来た。

 

上司

「君、社長が呼んでいる。
 
話があるそうだ」

 

「はい…」

 

恨めしそうにこちらを睨みながら、

夫は上司に連行されていった。