私
「ふざけているのはどっちだか」
と、私は少し大げさに溜息をついた。
夫
「俺が?俺のどこが…」
私
「家族が熱で苦しんでるのに
出張って嘘をついて
浮気相手と観光旅行なんて、
ふざけてるとしか
言いようがないじゃない」
夫
「な、なんの?ことだか?」
夫の声が上ずっている。
私
「テーブルの上、見たんじゃないの?」
夫
「見たさ!お前、隠れて
コソコソと勝手なことを!」
怒鳴りつければ私が大人しくなる、と
変な学習をしている夫。
だんだんと声が居丈高になっていった。
私
「勝手なのは、結婚してるのに
よその女性と関係を持って、
遊びにフラフラ出掛ける人
…ではなくて?」
夫
「ああ言えばこう言う!」
論理的な反論すらままならない夫。
実のところ、私はかねてより
夫の浮気を疑っていた。
それで、怪しいと睨んだ出張の日に、
興信所に依頼をかけていたのだ。
成果は上々で、節約して
貯金をしていた甲斐が
あったというものだ。
夫
「畜生!お前は一体
何がしたいんだよ!?」
私
「え?決まってるじゃない。
慰謝料と養育費を貰って、
離婚するんだよ」
配偶者の浮気の証拠を集めるのに
真っ先に挙げられる理由が
それではないか。