モラハラ

高熱の私に酒をぶっかけてきた 【4話】

 

「ふざけているのはどっちだか

 

と、私は少し大げさに溜息をついた。

 

「俺が?俺のどこが…」

 

「家族が熱で苦しんでるのに
 
出張って嘘をついて
 
浮気相手と観光旅行なんて、
 
ふざけてるとしか

言いようがないじゃない」

 

「な、なんの?ことだか?」

 

夫の声が上ずっている。

 

「テーブルの上、見たんじゃないの?」

 

「見たさ!お前、隠れて
 
コソコソと勝手なことを!」

 

怒鳴りつければ私が大人しくなる、と

変な学習をしている夫。

だんだんと声が居丈高になっていった。

 

「勝手なのは、結婚してるのに

よその女性と関係を持って、

遊びにフラフラ出掛ける人

…ではなくて?」

 

「ああ言えばこう言う!」

 

論理的な反論すらままならない夫。

実のところ、私はかねてより

夫の浮気を疑っていた。

 

それで、怪しいと睨んだ出張の日に、

興信所に依頼をかけていたのだ。

成果は上々で、節約して

貯金をしていた甲斐が

あったというものだ。

 

「畜生!お前は一体
 
何がしたいんだよ!?」

 

「え?決まってるじゃない。
 
慰謝料と養育費を貰って、

離婚するんだよ」

 

配偶者の浮気の証拠を集めるのに

真っ先に挙げられる理由が

それではないか。