モラハラ

高熱の私に酒をぶっかけてきた 【3話】

 

「まだ飯食ってるわけ?

本当、とろいよな」

 

「私は熱が高いし、
 
息子だってまだ本調子じゃないのよ」

 

「ふ~ん。俺、明日から

数日、出張だから。
 
風邪移すなよ」

 

妻子がフラフラなのに…

と思いつつも、仕事ならしかたない。

 

そう思っていたら、突然頭と背中に

冷たいものが走った。

驚いて顔を上げると、夫が

グラスを私に傾けていた。

 

「風邪のウイルスは
 
アルコールで消毒しないとな」

 

そう言って、夫はいつも晩酌で飲む

手作りの梅酒のボトルごと

私にかけてきた。

余りのことに呆然とする私を尻目に

 

「治るまで俺に近づくなよ」

 

と、寝室へ行ってしまった。

幸い、息子にお酒はかからなかったが、

こんなに屈辱的な行動を取られたのは

結婚以来、いや生まれてこの方

初めてのことだった。

 

急速に色々なものが冷めていった。

 

翌日、夫は私と息子を気遣うことなく

出張という名の旅行に出かけていった。

 

私は夫の旅行中に体調が戻り、

息子を連れて実家に避難。

事情を聞いた両親も烈火のごとく怒り、

私と息子を匿ってくれることになった。

 

実家に腰を落ち着けて数日、

 

「おい!どこにいるんだ!
 
ふざけてるのか!?」

 

と夫から電話が。怒鳴り声に

身がすくむ思いがしたが、

こんなことでは夫と戦えない。