コテツの牙は、ウイナの時とは
比べ物にならないほど深く
食い込んでいるようだった。
コテツは首を左右に
振る動作をしており、
本気で攻撃していることが
明らかだった。
カナメは必死に腕を
振り回そうとするが、
それが余計にコテツの歯を
食い込ませている。
無傷な方の腕でコテツを
何とか引き離そうとしても、
コテツは絶対に口を離さない。
ウイナ
「カナメ!大丈夫?」
自分の傷を押さえながら、
ウイナが叫ぶ。
しかし、痛みと恐怖で動けない
彼女には、
もはやカナメを
助ける余裕もなかった。
部屋中が混乱に陥る中、
私はようやく我に返った。
目の前で繰り広げられる
光景に、恐怖と動揺が
入り混じる。
コテツが私を守ってくれた…
でも、このままでは…
気が付けばさっきまで
ツヤピカだったフローリングは
大惨事だ。
血の跡が床に点々と付き、
家具も倒れている。
このままだとコテツがカナメに
もっと危害を加えてしまう。
それに、コテツ自身も
危険かもしれない。
キクノ
「コテツ!コテツ!
こっちにおいで」
震える声で、
私はコテツを呼んだ。
その瞬間、まるで魔法が
解けたかのように、コテツは
カナメの腕から口を離した。
そして、
私の元へ駆け寄ってきた。