数秒間、その場に立ち尽くした
まま動けなかった。
頭の中では様々な
可能性が駆け巡る。
単なる友人かもしれない。
仕事関係の人かもしれない。
でも、なぜコテツはあんなに
吠えているの?
意を決して、震える手で
リビングのドアノブに
手をかける。
深呼吸をして、
ゆっくりとドアを開けた。
目に映ったのは、カナメと
少し衣服に乱れがある、
見知らぬ女性の姿だった。
二人は親密そうに寄り添い、
笑い合っている。
その光景を目にした瞬間、
私の中で何かが
音を立てて崩れ落ちた。
キクノ
「ちょっと!
何してるの!?」
大声を出したにも関わらず、
カナメと女性はあっけらかんと
したものだった。
むしろ、私を見下すような
冷ややかな
目つきさえ感じられた。
カナメ
「あれ?ww
今日、なんか早くない?
ワン公が吠えてたせいで
気づかなかったわw」
カナメの声音には、
驚きや慌てた様子は全くない。
まるで当然のことのように、
他人事のように言い放つ。