いわば私は
天涯孤独の身なのだけれど、
実は1人ボッチではなかった。
私が小学生の時に、拾った
犬のコテツがいたからだ。
ありがちだろうけど、
このコテツ。
雨の日にダンボール箱に
入れられて、家の玄関脇に
放置されていた。
私は子犬を見つけて
喜んだけれど、両親はとても
困った顔をしていた。
そりゃそうだ。
大人になればわかるけれど、
家の前に捨て犬だなんて
迷惑でしかない。
飼うにしろ、保健所に
預けるにしろ、
里親を探すにしろ、
とにかく色々と大変だ。
けれど、私はクリクリ
黒光りする目をしたコテツに
もう夢中だった。
飼う気満々の私を見て、
両親は折れた。
その代わり、朝晩の散歩、
餌やり、トイレなどの躾は
私が中心になって行うと
約束させられた。
そんな約束をするまでもなく、
私はコテツの世話をした。
書店で犬のしつけの仕方、
飼い方の本を
何冊も買って読み漁った。
そんな姿を見て、
両親も知り合いに
犬の飼育方法を聞いたり、
便利なペットグッズを
購入したり、一緒に散歩に
いってくれたりと、
コテツを可愛がってくれた。
私たち家族の愛情が
通じたのか、コテツは
天真爛漫で愛想の良い犬に
成長した。
とりわけ私に懐いた。
コテツは友達や両親と
喧嘩した時も常に
私に寄り添ってくれた。
そんなコテツの姿に慰められ、
癒され、私は素直に謝ることが
できるようになった。
両親がいなくなり、
私には家と少しの財産と
コテツだけが残された。
コテツの存在が、どれだけ
孤独になった私の
慰めになったかわからない。