私はキクノ。
大学を卒業後、
就職先の先輩から誘われて
参加した街コンで、
カナメと出会った。
地味で垢抜けない私にも
カナメは優しく、卒のない
エスコートをしてくれた。
カナメは背も高く
すらりとしており、
顔もかなり整っている。
そんな彼に私はあっという間に
のぼせ上ってしまった。
連絡先を無事交換し終えた
私は、それはもう必死に
アピールした。
メイクも自分の肌に合う
化粧品から吟味し、BAさんの
指導を受け、何度も練習した。
料理は得意だったから、
カナメの好物を
聞き出しては振舞った。
服やアクセサリーの
コーディネートも、
パーソナルカラーも必死に
勉強したし、
ダイエットも頑張った。
だから、玉砕覚悟で告白し、
OKを貰えた時には心の中で
ガッツポーズをしたものだ。
社会人になりたての私は、
彼氏ができたことに
舞い上がっていた。
そして、とことん
カナメに尽くした。
カナメからすると、随分都合が
いい女を手に入れたものだと
ほくそえんでいたに違いない。
都合がいいと言えば、
交際から半年が経つ頃には
私の家で
同棲をするようになった。
私の家は1人で暮らすには
広すぎるほどの一軒家。
カナメが当時住んでいた
アパートより、勤務先への
距離が近く電車1本で
行けるのでどうしても
住まわせてほしいと
カナメに頼み込まれたからだ。
ちなみに
私の家は私の持ち家だ。
もちろん、私が自分で稼いで
購入したものではない。
私が大学4年生になる直前、
事故に巻き込まれて両親が
他界してしまったのだ。
兄弟姉妹がいなかった私は、
2人の遺産をそのまま受け継い
だというだけの話。