家に入るなり、その子猫は
好奇心いっぱいに
家の中を探検し始めた。
そして不思議なことに、
コテツがよく寝ていた場所で
丸くなって眠り始めたのだ。
好きな場所がコテツと
同じだったり、
犬と猫で違うはずなのに
ふとした仕草がコテツを
思わせるのは
気のせいだろうか。
でも、それはきっと私の中で
コテツの思い出と
新しい家族への愛情が
溶け合って
いるからなのだろう。
私の名前はキクノ。
両親が司馬遼太郎の
「燃えよ剣」が好きで、
沖田総司の愛刀「菊一文字」
から1文字を拝借して
名づけられた。
コテツは新選組局長・
近藤勇の愛刀「虎徹」が由来。
だから、今度の仔猫は
土方歳三の愛刀にちなんで
「ノサダ」と名付けた。
ノサダと私、
1人と1匹の暮らしだけど、
両親とコテツがいつも見守って
くれている気がしている。
窓から差し込む朝日を
浴びながら、
ノサダを抱きしめる。
キクノ
「ねえ、ノサダ。
これからもよろしくね」
ノサダは小さな
「にゃー」と返事をした。
新しい1日の始まり。
新しい家族との
新しい人生の幕開けだ。
コテツ、両親、そして私を
支えてくれた全ての人々への
感謝を胸に、
私は前を向いて歩き始める。
終わり