そして数日後、コテツは
静かに私の膝の上で逝った。
最後の力を振り絞って、
私の顔に鼻先を寄せて
甘えるように「くぅん」と
鳴いたと思ったら、
体の力が抜けた。
そして
2度と目を開けなかった。
キクノ
「コテツ…ありがとう。
今まで本当に
本当にありがとう」
涙が止まらなかった。
コテツと過ごした日々が
走馬灯のように頭の中を
駆け巡る。
雨の中で出会った日、
一緒に遊んだ日、悲しい時に
寄り添ってくれた日…
そして最後に
私を守ってくれた日。
コテツを荼毘に付して
1カ月半が経った頃、
私はまだ喪失感に
苛まれていた。
家の中はコテツの存在感で
満ちていたのに、
今はあまりにも静かで寂しい。
そんなある日、
家の玄関脇にダンボール箱を
見つけた。
中には捨て猫が1匹。
目はまだ
キトゥンブルーだったけど、
キラキラ輝く瞳がどこか
コテツを思わせた。
小さな命が私を見上げている。
その瞬間、
不思議な感覚に包まれた。
まるでコテツが
「もう大丈夫だよ。
新しい仲間を
迎えていいんだよ」
と語りかけてくるような。
コテツが縁を
繋いでくれたような気がして、
私はその子を家に迎え入れた。