カナメのコレクションを
売り払って得たお金で
私は豪遊…
したわけではない。
小学生の時にうちに来た
コテツはもうシニアだ。
というより、平均的な寿命を
越えている。
そのコテツのお世話に
使わせてもらった。
最高級のドッグフードや
快適なベッド、動物病院での
定期的な健康診断。
コテツの老後を少しでも
快適にしたいという思いで、
できる限りのことをした。
カナメと別れて
半年後のある朝、コテツの
様子がおかしいことに
気づいた。
いつもは元気に尻尾を振って
迎えてくれるのに、この日は
布団から出ようとしない。
動物病院に連れて行くと、
獣医さんは慎重な表情で
診察結果を説明してくれた。
先生
「コテツちゃんの状態は
残念ながら
あまり良くありません。
高齢であることも考慮すると、
今後の経過には
注意が必要です。
できる限りの治療は
行いますが、ご家族での介護も
重要になってきます。」
獣医さんの言葉は
婉曲的だったけれど、
その真意は痛いほど
明らかだった。
コテツの時間が
限られていること、私には
すぐに分かってしまった。
胸が締め付けられるような
思いだった。
その日から、私は
コテツのそばを離れなかった。
一秒一秒が愛しくて、大切で。
コテツとの時間を
少しでも長く過ごしたくて。