一度も怒った事のない私

結婚してから一度も怒った事のない私が爆発した日【8】

 

「そもそも、死角から暴力を

振るおうとしてきたのは

ツカサでしょう!

降りかかる火の粉を払って

何が悪いの!?

 

そもそも、男性が女性に、それも

後ろから襲撃する方が論外よ!」

 

ツカサ

「う…。

お前、どこでそんな技を」

 

「言ってなかったっけ。

私、柔道の段持ちだよ」

 

ツカサ

「だ、段持ち…!?」

 

私が柔道の黒帯持ちと知って

怖気づいたのか、

急に小さくなる夫。

 

「誰のおかげで不自由なく

暮らせるか、ですって?

確かにあなたはお金を

稼いでいるけど、そのお金で

栄養のバランスが取れた

温かい食事を

作っていたのは誰!?

いつも気持ちよい洋服や

お布団を用意していたのは!?

いつ誰が来ても

恥ずかしくないくらいに綺麗に

整えた部屋にしていたのは!?

ねえ、これをあなたは全部、

カノンが体調を崩したら

看病しながら、こなせるのね!?」

 

ツカサ

「そ、それは」

 

「私の稼ぎがたった数万!

小遣いってあなたは小馬鹿に

するけど、じゃあその分を

来月からプラスで

稼げるんでしょうね?

た っ た の 

数万程度、なのよね!?」

 

ツカサ

「それは、その」

 

「できないっていうの?

自分ができないことを、

私にはしろって言っていたんだ!

ねえ、こういうのをモラハラって

言うんだけど知ってた?

私がどんな気分でいたかなんて、

考えたことあるわけ?」

 

ツカサ

「う…あ…ごめん。

俺が悪かったよ」

 

私がここまで夫に感情を

むき出しにして

向かっていったことは

今までにない。

夫は普段とは違う様子の私に、

明らかに狼狽えていた。