私
「そもそも、死角から暴力を
振るおうとしてきたのは
ツカサでしょう!
降りかかる火の粉を払って
何が悪いの!?
そもそも、男性が女性に、それも
後ろから襲撃する方が論外よ!」
ツカサ
「う…。
お前、どこでそんな技を」
私
「言ってなかったっけ。
私、柔道の段持ちだよ」
ツカサ
「だ、段持ち…!?」
私が柔道の黒帯持ちと知って
怖気づいたのか、
急に小さくなる夫。
私
「誰のおかげで不自由なく
暮らせるか、ですって?
確かにあなたはお金を
稼いでいるけど、そのお金で
栄養のバランスが取れた
温かい食事を
作っていたのは誰!?
いつも気持ちよい洋服や
お布団を用意していたのは!?
いつ誰が来ても
恥ずかしくないくらいに綺麗に
整えた部屋にしていたのは!?
ねえ、これをあなたは全部、
カノンが体調を崩したら
看病しながら、こなせるのね!?」
ツカサ
「そ、それは」
私
「私の稼ぎがたった数万!
小遣いってあなたは小馬鹿に
するけど、じゃあその分を
来月からプラスで
稼げるんでしょうね?
た っ た の
数万程度、なのよね!?」
ツカサ
「それは、その」
私
「できないっていうの?
自分ができないことを、
私にはしろって言っていたんだ!
ねえ、こういうのをモラハラって
言うんだけど知ってた?
私がどんな気分でいたかなんて、
考えたことあるわけ?」
ツカサ
「う…あ…ごめん。
俺が悪かったよ」
私がここまで夫に感情を
むき出しにして
向かっていったことは
今までにない。
夫は普段とは違う様子の私に、
明らかに狼狽えていた。