振り向いた私は咄嗟に
夫を背負い投げ。
美しい弧を描いて宙を舞う夫。
夫は天井を仰いだまま目を
白黒させていた。
そしてようやく上半身を起こすと、
ツカサ
「おま、
なっ…な…、おま…!」
と言葉にならない言葉を
発しながら、怪物でも見るような
目を私に向けてきた。
昔取った杵柄とはまさにこのこと。
私は小中時代に柔道教室に
通っていて、結構いいところまで
行ったのだ。
親が「女の子だから万一の時の
護身のために」と
通わせてくれたのだが、
当時の私としては
女の子らしくない習い事だと
思っていて、誰にも言わずにいた。
女子は体育の授業で
柔道がないからバレなかったし。
もちろん夫にだって
秘密にしていた。
か弱い女の子でいたかった
私の乙女心だ。
もうこうなってしまっては
後の祭りだが。
ツカサ
「この…お前、嫁のクセに、
亭主に暴力とは…」
腰や背中が痛むのか、
顔を顰めつつも私を咎めてきた。
ならば私も反論させてもらおう。