正直、娘の誕生は
嬉しいことだったが、
せっかく大学まで出て得た
資格を名ばかりにしておくのは
もったいないと思っていたからだ。
そうして私は自宅から
徒歩圏のドラッグストアに無事、
パート薬剤師として
勤務することになった。
薬局には私同様、
子持ちのパートさんが何人もいた。
だから、休憩時間の雑談も弾んで、
すごく居心地の良い職場だった。
仲良くなるうちに
家族の話題になるのは、
もはや必然。
ところが、私が夫の話をすると
同僚たちが表情を曇らせ、
顔を見合わせることが度々あった。
私
「?どうかした?」
同僚A
「ああ…っと、うん。
外で働きに行くのに
旦那さんの言葉ひとつで
決まるんだなって。
もしかして、亭主関白なの?」
同僚B
「亭主関白って言うよりも…。
他の話と合わせると、
トウ子さん、旦那さんから
モラハラを受けてない?大丈夫?」
この時のやりとりで
私は目の前の霧がさーっと
晴れたような気分になった。
夫の態度は当たり前だと
思っていたけれど、本音を言うと
小さな不満が溜まっていた。
だけど、上手く言語化できないし、
私がほんの少し我慢するだけで
家庭の平穏は守られると
思い込んでいた。