祖父が寝込んだとき、
祖母は既に故人で、
母は父に手いっぱい。
他人を嫌がる祖父の世話は、
否応なく私の役となった。
モエカという、
サトルが26歳で
出来婚した女性、
つまり私の義妹は、
女手として
カウントされていなかった。
祖父が、孫嫁と
血のつながりがある孫娘、
どちらを介護役に選ぶか。
父にとっては
考えるまでもない事
だったのだろう。
そんな私を、モエカはかなり
見下していたように思う。
サトルにしてからが、
姉を姉とも思わない、
かなり下に見る
タイプだったから。
弟も弟なら、
嫁も嫁といったところ。
月に一回、実家に現れ、
申し訳程度に祖父を
お見舞いするのだが、
私がどんなに
忙しくしていても、
モエカは完全に
他人事だった。
サトルは、他人事以下に
思っていたかもしれない。
まるで、姉なんか視界に
入らないといわんばかりに
サトル
「爺ちゃん、
体の調子は?
早く良くなってよ」
祖父にだけ話しかけ、
モエカを連れて
すぐ出て行ってしまう。
ねぎらいも、
いや挨拶さえも、
あの夫婦はしないのだ。
【ナチュラル失礼夫婦】
と心の中で呼んでいる。