モラハラ

我が子の夜泣きに夫が激怒 【1話】

 

 

私はキヌ子。

現在29歳で、乳飲み子を抱えている。

私と夫はいわゆる授かり婚、

もっとストレートに言うとデキ婚だ。

娘の妊娠がわかったのは、

夫のリンタロウと付き合い始めて、

丁度1年が経った頃だった。

お互いにアラサーでいい年齢だったし、

そろそろ入籍をと考えていた頃で、

嬉しくもあったが

順番を間違えてしまった、

という感覚も確かにあった。

そのあたり、私と夫の感覚は

今どきというよりは古いのかもしれない。

 

 

「どうしよう…?
 
いや、産んでくれる…よな?」

 

 

夫の言葉はひどく頼りなかった。

私は、

 

 

「産むよ。産むに決まってる。
 
リンタロウは、

赤ちゃんを産んで欲しくないの?」

 

 

と強めに聞いた。
夫は、

 

 

「そんなわけないだろ!」

 

 

と声を荒げたが、

すぐにトーンダウンした。

 

 

「嬉しいに決まってる。
 
だけど、実感がわかなくて

戸惑ってるんだ…」

 

 

その気持ちは私もわかる。

妊娠しているとわかった時、

私も喜びと同時に

「どうしよう?」

と思ったのだから。

私はそのことを正直に伝えた。

 

 

「この子がやって来たことで
 
踏ん切りがついた。
 
キヌ子、結婚しよう。
 
順番は間違えちゃったけど…」

 

 

と照れたようにプロポーズをしてきた。

両家への挨拶で、

妊娠が先になったことを

チクリと言われたけれども、

その後は特に問題もなく

双方の実家とも

無難な付き合いが続いていた。