住人女性
「あのう、
もういい加減にDVDを
返して頂けませんか?」
海外のドラマシリーズ
全26巻にも及ぶ
長編DVDを、義母が
一向に返してくれないと
訴えたところから、
発覚した。
それどころか、
住人の皆さんに
小銭を借りていた。
130円とか260円とか、
何とも微妙な金額だった。
マンションの共用玄関には
自販機があった。
マサキが好きな炭酸飲料も
ラインナップに
入っていた。
金額から察するに、
その飲料を買うため
借りていたのだろう。
義母
「いま1万円札しか
なくて…後で
返しますから」
と持ち掛けていたらしい。
義母は仕事を
していなかったので、
暇だった。
よく共用玄関を掃除したり
していたとも聞いた。
住人の皆さんは、
そんな義母の姿を見ていて
「そのくらいなら」と
貸してくれていたようだ。
しかし、返そうとしない。
顔を合わせたら、
こそこそ
逃げていたのだという。
結果、居づらくなって
出て行ったのだろう。
もう顔から火が出るとは、
まさにこの事だった。
必死で謝り、弁償したり
返済したり。
でもちらちら見られて、
時にはひそひそやられた。
いたたまれなかった。