私
「それは遺言かしら。
何とも冴えないわね」
夫
「遺言?なんで俺が?遺言を
書くのは お・ま・え!だろ。
まさか変な事でも
書いてないよな?
国庫納付なんか許さないからな」
私
「遺言を書くべきなのは
あなたでしょう。
余命宣告から、もう半年
経つじゃない。
身辺整理は済んだ?」
夫
「何を寝ぼけているんだ?
身辺整理?
お前じゃなくて俺が、か?」
夫は目に見えて体調も
悪化している一方、
私はピンシャンしている。
それなのに夫は自分の体の状況に
気づきもしない。
切り出すときが来たようだ。
私
「余命宣告は私のじゃない。
あなたのよ」
しかし、夫は私の最後の
悪あがきと受け取ったらしく
夫
「わかったわかった。
せいぜい残された時間に
感謝して生きろよな」
と言い捨てて
自室に入ってしまった。
翌朝、寝室からリビングに
行くと夫がうずくまって
うめき声をあげていた。
さすがに見殺しには
できなかったので
救急車を呼び、すぐに義母にも
連絡を入れてともに搬送先の
病院へ向かった。
応急処置で安定し、余命宣告が
自分のものだとようやく
理解した夫は、人目も
場所も憚らず私を罵倒した。