私
「ちょっと…!」
私は夫の背後に目を向けた。
夫
「何よそ見して…」
と言いかけたところに
声が重なる。
義母
「アンタ!母親に向かって
なんてぇ言い種だい!
お前が私のことをどう思って
いるか、よくわかったよ!!
ごめんよ、トウ子さん。お土産を
渡しそびれていたことに気が付いて、
戻ってきたところだったんだよ。
そうしたらこのバカ息子が…」
私
「いいえ。
こちらこそ、見苦しい所を…」
とお互いに
ペコペコしている間に、
夫は自室に引っ込んでしまった。
義母
「トウ子さん、
薄々感じていたんだけれども、
最近はずっとこうなのかい?」
私
「ええ。お恥ずかしい…」
義母
「アタシこそ、こんな息子に
育ててしまって、なんと詫びたら
良いのやら…」
義母も亡くなった義父も、
優しい人格者だ。
どうしてその一人息子である夫が
あんな性格なのか、本当に謎。
義母
「幸い、あなたは仕事も
していて経済的にも自立してる。
もしうちの息子に見切りを
つけたら、遠慮なく
別れていいんだからね。
行く宛てがないなら、
ウチで一緒に暮してくれたって
いいんだ。トウ子さんはもう、
私の娘なんだから」
世間では嫁姑問題で揉めることも
多いけれど、うちは夫婦仲の方が
より深刻な問題だった。