夫は徹底して証拠を消しているようだ。
無防備なのか、
それとも用意周到なのか…。
私は夫のことがますます
わからなくなってしまった。
夫の身の回り品やファッションも
注意深く観察したが、
こちらも変化がなかった。
あの誤爆LINE以外、証拠がみつからない。
興信所や探偵を雇うことも考えたのだが、
私にはあまりにも高額で
踏ん切りがつかなかった。
浮気の証拠が掴めず、
浮気者の夫を泳がしておくのは
メンタル的にダメージが大きかった。
心の中でモヤモヤと
辛い気持ちが渦巻いていた。
夫は元々家事の分担に積極的だったが、
誤爆LINE以降は
それまでに増して協力的だ。
たとえば、週末の買い出し。
少しでも重たいものは
絶対に私に持たせなかった。
お風呂掃除といった結構ハードな家事も、
私にはさせずに変わってくれた。
休日の料理も、私の好物を
中心に作って振舞ってくれた。
夫の優しさを信じたかったが
一方で、浮気相手に触ったり
優しくしたそばから、
そんな事をしてほしくなかった。
そして、夫が作った私の好物を
半ば嫌々口にしたら、悔しいことに
好みのドンピシャの味だった。
思わずまた涙が溢れた。
夫は戸惑いながらも
私の背中を撫でてきた。