アツコ
「とはいえ、私は
アキノリ君のことを
『出来損ない』とは
呼びません。
とんでもないことをしたとは
思いますが、地の性格が
穏やかで優しいことも、
私がヤスノリさんと結婚して
からずっと見てますから」
冷房で冷えたのか夫は、
夫
「ね、義姉さん
…ぶぇっくしょい!」
クシャミして鼻水を
垂らしながら、
涙を浮かべていた。
アツコ
「で?」
義母
「で?」
アツコさんの言葉に
首を傾げる義母。
アツコ
「罪もない
キヌ子ちゃんを、
『出来損ない』呼ばわり
したんですよ、お義母さんは!
何か
言うことがあるでしょう!?」
義母は俯く。
どうしても私には
謝る気になれないようだ。
ヤスノリ
「アツコ、もういい。
上辺だけ謝らせても無駄だ。
却ってキヌ子ちゃんも
気分が悪いだろう」
ヤスノリさんがそう言って
アツコさんを下がらせた。
ヤスノリ
「母さん。
アキノリを庇うのは
もう金輪際よしてくれ。
じゃないと、
本人のためにならない」
義父は気づかわし気に
義母の手を取って、
一足早く帰宅するようだ。
リビングを出る間際に、
義母がようやく、
義母
「悪かった。
アンタに全部押し付けて」
と小さく呟いた。