ココナ
「ざっけんな!
私だってキヌ子さんの
旦那じゃなかったら、
アンタなんて願い下げよ!」
夫
「お前!どういうことだ、
俺は当て馬か何かか!?」
ココナ
「キヌ子さんばっかり、
みんなチヤホヤして!
私だってデザインやりたくて
入社したのに、
雑用ばっかり!ずるい!!」
夫とココナのやりとりで、
何となく浮気の理由が
見えてきた。
全然正当性はないけれど。
けれど、仕事の話に
移ったことで
夫の目はずる賢く光った。
夫
「ふん!離婚ね!
そういえば、離婚して
キヌ子は仕事、どーすんだ?
うちの会社を辞めたとして
30過ぎの女を
建築デザイナーとして
雇ってくれる所が、この辺りの
どこにあるってんだ!?」
私は唇を噛んだ。
私が実績を積めたのは、
義実家が経営する工務店に
勤めていたところが大きい。
地元では有力企業なのだ。
私が会社を辞めるとしたら
引っ越しが必要になるし、
畑違いの職場で1から
やり直すしか…。
思わず
涙が零れ落ちてしまった。
私
「私は…このままこの会社で
仕事を続けたいです…」
悔しい。
ずっと信頼されていた夫に
裏切られたのに、
せっかく見つけた天職も
手放さなきゃいけないなんて。
私
「今回のお客様の担当だけは
最後までさせてください。
私をご指名くださったんです。
信頼を裏切られた気持ちは、
今の私は誰よりも
深く理解しています。
だからこそ、私は今回の
お客様の期待と信頼を
裏切ることなく、
応えなくてはいけません」