私はキヌ子、29歳で
建築デザイナーをしている。
専門学校で建築デザインを
勉強した私は、その土地法で
有名な家族経営の工務店に
就職を決めた。
私は母子家庭で育ち、
母の老後も心配だったため
親元からそれほど離れていない
工務店を探すのは大変だった。
だから、採用通知が来た時には
飛び上がるほど喜んだ。
学校を卒業したばかりの私は、
必死に先輩のあとについて
デザインを学び、
ブラッシュアップしていった。
おかげで3年目を迎える頃には
口コミで私の評判を聞いた人が
指名で相談してくれたり、
本当に依頼を
してくれるようになった。
嬉しくて嬉しくて、
さらに仕事にのめり込んだ。
そんな中、私のことを
何くれとなく
気に掛けてくれたのが
アキノリだった。
話す内容が仕事のことに限らず
プライベートなものになるまで
時間は掛からなかった。
惹かれ合った私たちは
交際を重ね、やがて結婚した。
この時にアキノリが今の社長の
弟だと初めて知った。
社長はアキノリよりも15歳も
年上だし、同じ苗字だけど
全国で10本の指に入るくらい
多い苗字だから単なる偶然だと
思っていた。
社長が義父のコピー、
夫のアキノリが義母と瓜二つと
いうのもあって、言われれば
兄弟っぽい共通点があるけど、
気づかないよ～って感じ。
私と夫は結婚して
8年近くになるけれど、未だに
子どもに恵まれていない。
ブライダルチェックでは私に
問題はなかったけれど、
それでも、不妊治療に
数年は挑んだ。
けれど、赤ちゃんは
来てくれなかった。
