ユリカ
「お待たせしましたー!
当店のサービス券を
お持ちしました!」
私は窓ガラスをがらりと開けると、
義実家のメンバーに告げた。
私
「皆さん、ご注目ください。
タツヒロさんの
奥様のユリカさんです!
つまり、
トシキさんの浮気相手ですね!」
呆気に取られる義家族。
目を白黒させる夫。
ユリカは元々タツヒロさんの
お店のホールスタッフをしていた。
今は妊娠を理由に
仕事に立ってはいないけど、
その日の配達の後に久しぶりに
ゆっくりと外食に行こうと誘うと、
ホイホイついてきたという。
それで車に
待機させていたという話。
いや~、やり手の
経営者だけあって、
タツヒロさんは頭が切れる。
なんでこんなに賢い人を敵に
回すような真似をしたんだろうね。
ユリカも夫も。
そこだけは同情せざるをえない。
ちなみに義実家の表札からは
夫との関係がバレないだろうと
踏んでいた。
夫の苗字は佐藤とか鈴木とか
田中みたいな、全国でもトップ10に
入る苗字だからだ。
見事タツヒロさんの張った罠に
嵌ったユリカは、部屋の中にいる
夫に気づいてアワアワしだした。
ユリカ
「…っえ?
う、嘘。嘘でしょ?
ちょちょ、ちょっと、なんで!?」