夫
「トウ子、俺が本当に悪かった。
本当にごめん」
涙で潤んだ目でずっと頭を
下げ続けていたけど、
私の心は全く動かなかった。
私
「許すわけないでしょ。
あなたからも、
あのユリカさんからも、
私は慰謝料を
しっかり取って離婚するつもりよ」
そう宣言した私に便乗したのは、
さっきのデリバリー担当者。
タツヒロ
「あ、自分もトシキさんに
慰謝料を
払ってもらうつもりですから」
夫・義家族
「はい?」
義兄
「えっと、飲食店のデリバリー
担当の方ですよね?
弟と何の関係が?」
パニくる義実家と夫に
私が種明かし。
私
「この方はタツヒロさんです。
私の知り合いで、このメニューを
扱っているお店の
オーナーシェフでもあります」
私の紹介に、タツヒロさんは
マスクを外して挨拶をした。
義母と義妹が目を剥く。
そこにいたのは
ハリウッドスターとまでは
行かないものの、中々にダンディな
男前がいたからだ。
タツヒロ
「はじめまして。
ユリカの夫のタツヒロです。
ユリカのことはご存知ですよね、
トシキさん。
あなたの浮気相手です。
ここ半年あまり、僕が夜の相手を
できなかった分、トシキさんには
大変お世話になったそうですね?」