夫
「胎児の心音って
結構早いんだな。
エコー写真も思ったよりも
わかりやすくて、俺、感動したよ」
という、
男性の興奮した声が聞こえてきた。
私が通っているのは産婦人科で、
不妊治療の人と妊婦さんの両方が
通っている。
一応、待合室は産科と婦人科で
別れているけど、
簡単なパーテーションと観葉植物で
区切られているだけなので
声は筒抜けだし、覗こうと思えば
もう一方の待合室を
覗けてしまうのだ。
私は男性の声に聞き覚えがあった。
毎日毎日、聞いている声だった。
そう、夫のトシキだ。
なんで?どうして?
こんなところに?
内心パニックになった私は、
そっと隣の待合室を
覗いてしまった。
ごくごく似た声の
他人であってほしい。
私の切なる願いは
見事に砕け散った。
そこにいたのは
紛れもなく、
夫のトシキだったからだ。
トシキの隣には
20代半ばくらいの女性がいた。
少し垂れ目で、色白。
小柄でややポッチャリとは
しているけれど、お肌はモチモチ。
いかにも触り心地が
良さそうな感じで、
ああいうのが
好きな人はいるよな~って感じ。
ちなみに私は水泳を
やっていたせいか、肩幅ガッシリで
体の凹凸は少なめだ。
背も160cm台後半と
女性にしては高いほう。