夫は無言。
これ以上シンプルな
問いはないのに、答えられない。
それこそが夫の行動の答えだ。
アオイは非常に険しい表情で、
夫を睨んでいた。
当然だと思う。
信頼していた父親が、
我が子から金銭を
騙し取るだなんて、
誰が考えるだろうか。
夫はしきりに喉元をさすりだした。
これは夫が嘘をついたり、
隠し事をしているときに
誤魔化そうとしているサインだ。
25年以上にもなる結婚生活で、
私は夫の癖くらい把握している。
アオイ
「最初は
3万円から始まって、
ついこの前は10万円だったよね!
病院に行っているって言うから
心配して援助したのに、
嘘をついていたなんてひどい!」
夫
「な、嘘なんか…」
そう言ってまた喉元をさすりだす。
私
「あなたが
通っているって言っていた
隣町のクリニックなんだけど、
だいぶ前に閉業してるの…
息子さんがいたんだけど、
専門がお父様とは違うんですって。
だから今は息子さんが院長を
務める皮膚科になってるわ」
夫
「え!?そんな…」