夫は鶏さんと卵さんに
謝るべきだと私は思ったね。
義母
「なんだい。
後継ぎだって偉そうに言うから、
やらせてみたのに商品どころか
碌に食べられもしない
ゴミにして!
トウ子さんはね、
この1年足らずでうちの味を
身に付けたんだよ!
よく見ておきなさい!」
と、なぜか私に実演を
無茶ブリする義母。
えぇ~、いきなり?
と内心焦りながら、
私はいつものように
花かつおで一番出汁を
取ることから始めた。
軽く卵を溶き、ほんの少し
お醤油を加え、熱した
玉子焼き器に流し込んで
手早く丁寧に巻いていく。
多分、簡単そうに見えると思う。
だけど、一度大失敗した夫には、
少なくとも自分では到底
できないことを私がやっている
ことは理解できたようだ。
出来上がった出汁巻き卵を
一口つまんだ夫は
イオリ
「美味い…
なんて美味いんだ」
と涙を流していた。
なぜだろう…
私はドン引きしていた。