イオリ
「そんなことを言っても、
俺はたった一人の
息子じゃないか。
これまで家業を継ぐのが嫌だと
言っていた一人息子が後継者に
なるって言ってるんだから、
喜べばいいのに」
…傍から見ていてもムカつく。
当事者の義両親は
もっとムカついていただろう。
案の定、義母、大・爆・発!!
義母
「そんなに言うなら、
うちの目玉商品である
出汁巻き卵を
今すぐ作ってみなさい!
これができないのなら
跡取りだなんて
認められない!!」
と厨房に夫を引っ張って行った。
一緒に連行される私
(なんで?(笑) )
夫は厨房に並べられた
調理器具に右往左往。
とりあえず卵を割って
かき混ぜたはいいが、肝心の
だしの取り方がわからない。
一般家庭料理であれば
顆粒出汁をササッと
入れてしまえばいいけれど、
目玉として売り出している商品に
それはダメ。
夫は出汁の取り方もいい加減…
というかわかっていないし、
そもそも卵を
巻いて焼くこともできないし、
火加減も強すぎてあっという間に
真っ黒こげの
謎の物体が出来上がった。