コウキ
「もっと、こう、何かないのか?
未練とか、泣きつくとか…?」
往生際の悪さに、
私も淡々とした態度を保つのが
難しくなってきた。
私
「何を今更。
あなたになんで
縋りつかなきゃいけないのよ!
確かにあなたよりは
収入が少ないけれど、
1人暮らしをするには十分だし
家事全般も自分でできるから
問題ないの。
離婚して一人になったら、
困るのは私じゃなくて、ア・ン・タ!」
私から初めて「アンタ」
呼ばわりされた夫は目を白黒。
私
「経済状況も家事も、
私一人でも問題ないわけ!
それを一緒に暮らして
アンタの分まで家事をやっていたのは
夫婦として生涯を誓い合ったから!
アンタは私のその気持ちに
点数を付けるなんて
ゲスなことをしたんだからね!」
だが夫はどうしても
離婚が嫌だったのだろう。
最後の抵抗を試みた。
コウキ
「だけど、先輩は
これで上手く行ったって…」
無駄な抵抗である。
私はバッサリと切り捨てる。
私
「そう思ってるのは
その先輩だけだから。
奥様、私と同じように
離婚の準備を進めてるって、
この前言っていたもの」
ギョッと目を剥く夫。
コウキ
「そんなわけないだろ?
大体、なんでキヌ子が
先輩の奥さんの状況を
知ってるんだよ!?」