家族

急いで実家へ帰省すると…【17】

 

思わず声が裏返る。

周りの空気が凍りついた。

 

「命を張った芝居?

こんな嘘まで…どこまで

私を利用すれば気が済むの!?」

 

「トウ子、落ち着いて…」

 

「落ち着けるわけないでしょ!?

救急車まで呼んで…

人の善意を

踏みにじるようなことをして!」

 

ヒロヤ

「姉ちゃん、

俺たちだって必死なんだ…」

 

「必死?何が必死なの?

人を騙してまで金を巻き上げようと

する神経が理解できないわ!

救急隊員や病院の人たちの時間を

無駄にして、

本当に困っている人の助けを

遅らせるかもしれないのよ!」

 

アキノ

「怖っww

ちょっとぉ~!そこまで

言わなくてもいいじゃ~んww」

 

「あなたは黙ってて!

この家のやり方を

良しとしてるあなたも同罪よ!」

 

コウスケ

「トウ子、

一旦落ち着こう。」

 

その言葉で我に返り、

怯えた表情で私たちを

見ている娘に気づいた。

 

「そうだね…ごめん。

怖かったよね?」

 

娘は小さく頷いた。

 

深いため息をつき、

家族の方を向く。

 

「これで本当に終わりよ。

もう私たちに関わらないで。

…家族じゃない。他人よ」

 

「トウ子!待って!」

 

ヒロヤ

「姉ちゃん!」

 

彼らの声を振り切るように、

コウスケと娘の手を取り、

車に向かった。

もう振り返ることはない。

 

アクセルを踏み、

車はゆっくりと動き出す。

 

「トウ子!待って!

ねぇ!助けて!!

本当に今度だけでいいから!!

お金あるんでしょ!?!?」

 

ヒロヤ

「姉ちゃん!待てよ!

話聞けって!」